LMI Get Overlapped! 難問解説

 2019/2/15~21に開催されたLMI Get Overlapped の最低正答率問題、10 Irregular Sudokuの解説をしていきます。

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0. 目次

1. はじめに

 23点の問題で、2合体としての最高配点でした。コンテストが難問だらけのため、触ってみてすぐ諦めたり、そもそも見ていないという人も多いかもしれません。

 以下の解き方は、必ずしも最速の解き方とは限りません。また、この問題では強力な全体制約がありますが、今回はこれを使わない方法で解いていきます。最後に全体制約を使ったショートカットを紹介します。

2. 解説

 ※問題解説では、RとCを使ってマスを示します。例えばR3C7は、3行7列目のマスのことを指しています。今回は、12行12列まであります。

まずは絶対に知っておかなければならない基礎知識から行きます。2つの盤面が重なっており、それぞれの盤面について列に1-9の数字が出現するため、図のタテの灰色3マスや、ヨコの灰色3マスには同じ数字の組が入ります。この制約はコンテスト全体で常識として用いられています。Irregular Sudokuだけ枠が特殊ですが、classic形状と同じように成立することに気を付けましょう。

以後、これを「基本手筋」と呼びます。

今回の場合、タテで示した組は814になることが分かり、数マス埋まります。

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それから、中央の3x3の領域の中央が5だとすぐに分かります。また、19の二国同盟、246の三国同盟があります。ここまではいいのですが、慣れていないと、これだけで手がとまってしまうかもしれません。

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まずは、C6を見てみましょう。7が入るマスはR9しかありません。

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次に注目する数字は3です。3が入らないマスを緑で示しています。ここでR6を見ます。星のマスに3が入ってしまうと、「基本手筋」によって破綻します。なので、R6C9に3が入ります。

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次に、C7を見ます。R1にはやはり「基本手筋」から3が入りませんから、3が入るのはR9です。

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C8に3の予約があるので、灰色マスに3は入りません。よって、R4の3の予約から、R3C8が3となります。

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3を埋めきるとこうなります。左上は決まりません。

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次に注目するのは8です。中央右上のブロックで8が入るマスは一つしかありません。

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C1、C2の8の予約から、いくつか候補マスが消えます。C4の星のマスは「基本手筋」から8が入りませんから、R9にも予約ができます。この予約で消せるのは、R9C9だけであることに注意しましょう。

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C12に8の予約ができるので、その下のブロックで8が決まります。

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次はちょっと高度です。C9の黒星の両方に8が入るとすると、C11で8が入らなくなります。よって黒星には8は入りません。(後で説明する全体制約2でショートカット可能です)

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結局、8はここまで決まります。

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次に見るのは5です。R9C2の5が「基本手筋」から決まり、すぐにR8C3が5になります。R4を見ると、「基本手筋」からR4C11に5が入らないため5の予約が発生します。R3を見ることでR3C5が5になります。

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R10の5の予約からR12C11が5になります。続けてR11C5が5だと分かります。5はここまでです。

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R6で「基本手筋」を使いましょう。7が入ることと、79の二国同盟が分かります。

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まだまだ「基本手筋」を絡めた手筋が続きます。次に注目するのは4です。R7とR9で「基本手筋」を考えると、星マスに4は入りません。

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よって、R8C3が4、続けてR9C9が4と分かります。

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まだこまごまと埋まるマスはあるのですが、そろそろ本問題の最も重要なポイントを考えましょう。R9で「基本手筋」を考えると、C1とC11で同じ数字が入ります。これを仮にAと置きましょう。さて、右側の盤面の下4行を切り取ると、1-9が4回ずつ現れます。一方、下の方にある4つのブロックを合計しても、1-9が4回ずつ現れます。つまり、灰色マスに入る4つの数字の組は等しくなるはずです。よって、星マスがAだとわかります。

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更に、盤面中央下にあるブロックでAが入るマスを考えてみると1マスしかありません。しかし、そのマスにはすでに1が入っています。つまり、Aは1だと分かりました。

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これによって、1の場所が全て決まります。他の数字の予約も一気にほどけていきます。

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ここからも実はそんなに簡単ではないですが、あとひと踏ん張りです。まず、R8C1が6だと分かります。R8で「基本手筋」を考えると、3つの数字の組は4,6,9だと分かります。よって、R8C2は9です。あとは埋めるだけになるはずです。

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3. おわりに

 23点どころではない、何とも重たい問題でした。はたしてこれを仮定せずに解いた人はいたんでしょうか...? 今回の解説は、独立した手筋が多々含まれているため、順序を変えても解ける箇所がありますし、もしかしたら不要な議論が含まれているかもしれません。本番で最短ルートを辿れるわけでもありませんし、ご容赦ください。

4. 全体制約

このルールには強力な全体制約があります。(Twitterで議論されていましたが、鍵垢のため引用はしません。)

1つ目。重なっている6x6マスに、1-9が4回ずつ現れます。つまり、下の図の灰色マスには、1-9が2回ずつ現れます。1が入る場所を考えてみると、実はR4C5が1と初手で決まり、解き方解説の最後の部分をカットすることができます。作者がこれを想定しているのかどうかは微妙なところです... f:id:citizen_puzzle:20190220045546p:plain

2つ目。図の灰色の3x3マスに、1-9が1回ずつ現れます。これも一部議論をショートカットできるため有用でした。 f:id:citizen_puzzle:20190220045550p:plain

証明ですが、どちらも盤面にブロックが14個、列が2盤面合わせて18列あることを使えば示すことができます。パズル解析学(?)の練習問題としてどうぞ。

5. 文責

 panista